医療のDXとは?医療デジタル化のメリット・デメリットを解説

概要

医療関係者ならよく耳にする「医療DX」。聞いたことはあっても、実際に何を指すのか、どうして注目されているのかご存じの方は意外と少ないのではないでしょうか。この記事では医療DXとは一体何なのか、医療にデジタルを導入することによるメリットとデメリットにはどのようなことが考えられるのかという疑問を解消し、実際の導入事例を紹介します。

医療DXが必要になった背景

医療DXが取り沙汰されるようになった背景には、今日の医療業界の不安定さがあります。ここでは、その不安定さとは何かという部分を掘り下げながら、なぜ医療DXが注目されているのかということを明らかにします。

少子高齢化

ご存じのとおり、日本は少子高齢化が世界で最も進行している国です。高齢人口の増加に伴って、医療を必要とする人が増え、需要が年々高まっています。特に、2025年には団塊世代が75歳以上の後期高齢者になるため、今後はこれまで以上に医療ニーズが高まると予想されます。このため、医療施設当たり診察する人の人数が増加することが予想されるため、今後クリニックなどの医療施設はより多くの患者を捌くことが求められます。

医療業界全体の人材不足

医療従事者の人数自体は増加傾向にあるものの、高齢化による医療に対するニーズの増加に供給が追いつけず、医療従事者は現在不足傾向にあるため、医療人材が渇望されています。しかし、このような現状に反して、医療従事者の労働環境や待遇は充分であるとは言えず、離職が相次いでいます。厚生労働省が発表する「令和2年雇用動向調査結果の概要」によると、令和2年中の医療福祉業界の離職率は14.2%と他業界に比べて高い水準にあります。特に、看護師においては慢性的な人手不足が一人当たりの業務量の増加を招き、心身ともに追い詰められた看護師が離職して更に人手不足が加速するという負の連鎖が発生しており、深刻な社会問題になっています。

 このほかにも、民間医療機関の赤字率の高さや新型コロナウイルス感染症の流行に起因する経営難、国の医療費抑制策など、さまざまな壁に医療は直面しています。このような医療現場の不安定さを解決するものとして期待されているのが「医療DX」なのです。

医療DXとは

しかし、そもそも医療DXとは何でしょうか。まず、DXは「Digital transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略で、IT技術による生活やビジネスにおける変革のことを指します。それを医療分野に応用したものが「医療DX」なのです。つまり、医療DXとは、データとデジタル技術を駆使して医療業務や経営業務を変革するものであるということができます。電子カルテが最も有名な例ですが、その他にも「デジタル診察券」「自動再診受付機」「Web問診票」「予約システム」「オンライン診療」「自動精算機」など、業務のプロセスごとに最適化されたツールががあり、全国の医療現場で実用されています。

医療DX導入のメリット

では、医療DXによって具体的にどのような問題が解決されるのかを見てみます。

業務の短縮、効率化

 医療DXの最も強力な効果が、業務の短縮化と効率化です。例えばWeb問診票について考えてみましょう。従来の問診票は、来院後に患者が直接紙に記入したものを受付が回収し、医師に手渡し、その問診票の内容を電子カルテに打ち込むというプロセスによって成り立っていました。しかし、Web問診票を導入することによって、このようなプロセスが劇的に短縮されます。患者が入力したものが半自動で電子カルテに転記されるため、WEB問診票の導入後は従来のプロセスが一瞬で完了するようになり、患者一人当たりに必要な業務が短縮されます。あるクリニックでは、一人当たり平均5分かかっていた問診業務がWEB問診の導入によって約30秒に短縮されたそうです。一人当たりで見ると、長い時間が短縮されるわけではありませんが、患者さんが10人、20人と重なってくるにつれて非常に長い時間が短縮されるようになります。

 これはほんの一例ですが、DXツールの導入により、医師や看護師の業務の負担を軽減することができ、医療従事者の労働環境改善に繋がります。同時に、患者あたりに必要な時間が短縮され、効率的な診察が可能になるため、経営上の問題も改善されます。

利便性向上による患者満足度の向上

医療デジタルツール導入によって、患者の待ち時間短縮や診察時のストレスの軽減を狙えます。例えば、自動精算機を導入したことによって、通常30分前後待たせている会計の時間を数分程度に短縮できたとすると、患者の満足度は上昇し、再診して頂ける可能性が高まります。また「待ち時間が短い」という特徴は他の医療機関との差別化にもなるため、集患にもつながります。

感染対策

更に、予約システムや自動精算機などの導入は、感染対策にも効果的です。例えば、予約システムによって院内にいる患者の人数を管理、調整することが可能になり、密を回避できます。また、自動精算機は職員と患者の接触を減らすことが可能になり、患者さんと職員の健康を守ることに繋がります。コロナ禍では感染対策の徹底が患者さんが安心して来院することに繋がり、集患にも直結するため、DXツールの導入による感染リスク低下は非常に重要なメリットです。

省スペース

副次的なものではありますが、物品保管スペースの削減も可能です。都心のスペースに余裕がないクリニックの場合、カルテなどの書類や備品を保管しておけるスペースが限られているだけでなく、膨大な数になると、それらを探し出すのにも時間がかかります。しかし、ITを導入することで書類をクラウド上で保管することができるようになるため、書類のためのスペースが必要なくなります。また、備品についても、在庫管理や発注のツールを導入すれば、大量の在庫を抱えることがなくなるので、保管用スペースを最小限に抑えられます。

医療DX導入の際の注意点

運用できるまでに時間がかかる

一つ目の注意点はスムーズな運用ができるようになるまで一定の時間がかかるという点です。ITツール提供会社との初期設定などの打ち合わせに時間を多くとられるということや、導入後にも殆どの医師、看護師は慣れるのに時間がかかります。そのため、導入までの流れがスムーズなもの、スタッフ全員が使いやすいものを選ぶ必要があります。また、導入前に充分な研修を行うことも必要となってきます。

初期費用、月額費用がかかる

デジタルツールの導入初期には、システムの設定やスタッフの研修費用、ネットワークへの接続などが必要なため、初期費用が高額になるものも少なくありません。小規模のクリニックにとっては大きな負担になることがあり、それが原因で諦めてしまうこともあるようです。しかし、案外初期費用が安価なものもあるので、探してみると良いものが見つかる可能性もあります。また、月額費用も機能やオプションの有無によって大きく変わります。貴院に必要な機能、不必要な機能を見極め、適切なものを選ぶようにしましょう。

高齢患者には個別の対応が必要

デジタルツールの特性上、高齢の患者さんが扱いずらさを訴える可能性があります。その場合は、スタッフが利用方法を教えたり、デジタルツールを使わない方法で個別に対応する必要が出てきます。したがって、高齢患者が多く来院する医院では、できるだけ機能や使い方がシンプルなものを選ぶことも手です。とはいえ、NTTドコモ モバイル社会研究所の研究によると、2022年現在では高齢者のスマホ利用率は60代で91%、70代でも70%あるそうなので、高齢者でもデジタルツールを全く使えないという人は少数になってきたようなので、過剰に心配する必要はないのかもしれません。

DXをゴールにしない

多くの人が「DXすれば現在の医療の問題が解決する」というように勘違いすることがありますが、それは正しくありません。あくまでDXは医療の問題を解決するための手段であり、それ自体が目的になってしまってはならないのです。導入を検討する前に、「このDXツールを導入することでどのような医療の問題が解決できるのか」ということを明確にすることが重要です。あくまで「DXによって問題が解決する」ではなく、「医療の問題解決のためのDX」であるということに注意しなければなりません。

医療DXツールの導入事例紹介

ここからは、医療DXツールを導入した事例を紹介していきます。

診療予約システムAを導入したX産婦人科の例

導入前、X産婦人科は電話での完全予約制だったため、受付スタッフが全ての電話に応対しなければならず、非常に負担になっていました。また、電話が集中した時に電話を受けることが出来ず、機会損失が発生していました。

そのため、A社の診療要約システムを導入してWebで予約をすることができるようにしたことによって、受付スタッフの負担を軽減でき、予約の取りこぼしがなくなりました。

Web問診システム「Ambii」を導入したなかざわクリニックの例

茨城県のつくばみらい市にあるなかざわクリニック様では、発熱外来にて問診票を利用されています。導入前は発熱外来時、看護師による1人15分程の電話問診を行い、その後診療という流れであったため、看護師の業務量が多くなることが問題点でした。その問題を解決するため、なかざわクリニック様ではAmbiiのWEB問診票を導入しています。結果、スタッフの負担が大幅に軽減され、感染症の診察がスムーズに行える様になりました。また、電話回線のパンクまで解消が出来てスタッフ間で好評いただいています。

まとめ

医療DXを通して、現在人海戦術で行っている業務をシステムに置き換えることで、患者さんへの病状の説明や手当など、スタッフの手を必要とする部分にリソースを当てることができるようになります。DXは、みなさんの時間をより有効的に使うための手段です。現在、業務効率化や患者満足度の向上のため、都市部を中心に大病院のみならず、小規模のクリニックなどでも実装されています。価格も小規模クリニック向けのリーズナブルなものも多数ございますので、きっとあなたのクリニックに合うものも見つかるはずです。一度検討されてみてはいかがでしょうか。

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